ずっとお前を待ってるから
「ん…っ」

「はよ、調子どうだ?」

「…きゃあ!?」

「うおっ」

ふと、目覚めた周りの景色に昨日の事を思い出す。すると、白い天井から一変し目の前に幼なじみの顔が広がる。
悲鳴を上げ、たじろぐとあちらも驚いたのか顔を離した。

「なんで、いるのよっ…」

「時間あっからよ、お前の寝顔でも拝もうかと思ったんだが……良い顔してたぜ?」

「な…っ!?」

顎に手を当てうんうんと何やら頷きつつ私の顔をニヤっとしたり顔で見つめると突然耳元で囁かれ心臓が跳ねる。
一瞬私は言葉に詰まり冬二を一睨みをすると子供っぽい笑みを向けられうぐっと出かかった皮肉が喉で止まる。

「そういえば、静白が鬼柳とその妹…を連れてここ来るって言ってたぜ?」

「皆忙しいのに…」

鬼柳の妹と言うだけなのに心底嫌そうな顔をしため息を吐いた彼は相当、よくわからないが鈴子ちゃんを警戒しているように見えた。

「じゃ、俺そろそろ行くわ」

「あ、そっか…来てくれてありがと」

腕時計を見て、椅子から腰を上げカバンを持ち上げた彼に少し…ほんの少しだけ名残惜しさを感じた。すると、私の声色を察したのか困ったような顔を向けると頭を撫でられた。

「そんな、寂しそうな顔すんなっての。放課後来てやっからさ」

「な…っ、べ、別にそんな事思ってないもん…!来なくてもいいっ…!」

「はは、意地張って……可愛いなお前」

「っ…」

こう素直に言われると返す言葉が思い付かない。酷く男臭く微笑む口元に気を取られ看護婦さんが来ていたのが気付かなかった。

「あらあら、カッコイイ彼氏さんですね」

「か、彼氏じゃっ」

「いやいや、俺の彼女の方が何倍も可愛いっスよ。じゃ、また放課後な?ハニー?」

「ハ、ハニーじゃない……っ!!」

ニヤニヤと楽しげに笑いながら病室を後にした彼にむくれていると看護師さんは微笑ましいというように笑っていた。
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