ずっとお前を待ってるから
男子生徒にからかわれつつも猫撫で声で誰かを呼んだ。入ってきた人物に女子生徒の目が釘付けになった。

「今日から、お世話になる緑下冬二(みどりしたとうじ)だ。それよりもここに清安柚那がいるってのきいたんだけどよ…」

今、なんと言った?緑下…?嘘。絶対にありえない。思考が停止する中女子の視線は私にバッと一斉に向けられた。

「先生、俺。アイツの隣がいいです」

「え、でも…」

「だめ?」

「〜っ!!ううん!駄目じゃないわよ!丁度空いてるから!」

「あんがと、先生」

訳が分からず混乱していると後ろの一番後ろの私の隣の空席を指差しそのままこちらに近付いてきた。

「久しぶりだな、柚那」

「…」

「おいおい、無視すんな」

「あ、あなたは知りません」

「えー、嘘つけよ。さっきあからさまに驚いた顔してたろ」

「っ…!し、してません!!」

おかしいよ。だって、こんな。ゆ、夢よ。きっと。
嬉しそうに私の顔を覗き込む彼に顔を逸らし外を眺めた。担任は納得いかないと言ってるような素振りをしつつも授業を始めた。

「なぁー、無視すんなよ」

「半径一メートル以上離れてください!」

「折角、久しぶりに会ったってのにそれはねぇだろ!」

昼休み。急いで海の所に行くも付いてくる彼に走って逃げるもあっと言う間に追い付かれ腕を引かれる。

「待てって」


「い、急いでるんです!」

「幼なじみの顔をお前は忘れるのか?」

「っ…」

紡がれた言葉と同時に少し強まった握力。昔はあんなに柔らかく小さかった手が今は骨張って如何にも男性の手と意識してしまう程、身長も私と同じくらいの目線だった筈が恐らく180はあるであろう彼に成長したと感じるも緩んだ腕を振り払った。

「…あなたの事は知りません」

「あっ!おい!」
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