ずっとお前を待ってるから
そう、本当に女子からの人気がすごい。廊下で話し掛ける時もチラチラと冬二を見つめる女子がほとんどだった。
そうこうしてる間に屋上の扉に手を掛けたその時だった。
すぐ顔の横に手を置かれた。

「俺はお前だけにカッコイイって思われてぇんだけど…?」

「っ…!」

「なぁ、お前を好きって言ったら…どうする?」

耳元で囁かれた低い声に心臓の鼓動は高まるばかりだった。でも、彼と離れたのは小学校六年生の時だ。それからずっと私の事を想ってただなんて少しありえない。でも、その言葉は本当に嬉しかったのだが…。

「ご、ごめんなさい。やっぱりまた今度話そう?じゃ、じゃあね!」

「あ、おいっ!」

慌てて彼と扉の間からスルッと抜け私は、そのまま振り向かず走り教室に戻った。それから放課後まで彼と話す事は無かった。

「あの幼なじみ君とは仲直りしたの?」

帰宅途中、昼間の事を楽しそうに聞いてくる海に首を横に振った。本当は仲直りをしたはずだったが私が彼の想いから逃げた。

「なんで仲直りしなかったのよ?」

「…好きって…私の事好きって」

「言われたんだ」

「うん…」

「断ったんだ?」

何もかも知ってる様な口振りで話す海に何も言えない。本当は彼の事を好きなのかも知れない。でも、離れてた期間が長ったせいか自分の気持ちを信用出来なくなっていた。

「わからないの…好きなのか…どうか」

「怖くなったんだ?」

「…うん」

私の話しに呆れた感じでため息を吐きつつも私の頭をあやす様に撫でてきた。

「今は、いきなりの事で心がついてこれてないんだよ」

「うん…」

撫でられた事で少し落ち着きを取り戻した私は海に抱き着いた。今の冬二の事なんて私には何もわからない。だって、昔の冬二で時が止まっていたのだから。

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