ずっとお前を待ってるから
あれから三日が経った。冬二とはあれから一言も話してない。寧ろ、転校初日の朝と変わらない状況になっている。

「おい、無視すんなよ」

「ごめんなさい、急いでるから」

あの時から冬二の顔が真面に見れず私は逃げ続けていた。何度も声を掛けられても用事があるから、の一点張りで逃げていた。

「そんなに俺の事嫌いなのかよ、なぁ柚那」

「本当に忙しいの」

「嘘つけ、お前ただ俺から逃げてるだけだろうが」

「…忙しいんだってば」

「逃げんなよ、なぁゆーっ!」

「…っ」

廊下を早足で歩くも後ろを付いて廻る冬二に一回も振り向かず海の教室を目指した。すぐ傍まで聞こえてた声はぴたりと止みホッと胸を撫で下ろすと昔懐かしい呼び名を廊下に響く声で叫ばれた。

「その名前で呼ばないでよっ!!」

「くっ、馬鹿野郎。やっとこっち向きやがったな」

私の嫌いな呼び名で叫ばれたものだから思わず反論してしまい、してやったと言う顔で私を見る相手に走ってその場から逃げ出した。

「…もうやだ」

「はいはい、かわいそうにね」

「もう、嫌い」

「本当は恥ずかしいだけなのにね」

「う…」

海の教室に無事に到着するとすぐ海に抱き着いた。またか、とでも言う感じに宥める様に頭を撫でられた。しかし、少し図星の事を言われ唸り声を小さく上げてしまう。

「ほら、また来たよこっちに」

「うわ…っいないって言ってね!」

「わかったよ、緑下くーん」

「そこにゆーいるか?」

だんだんと近付く足音に私は視覚で見えない机と壁との隙間で身を潜めた。あとは、海を信用して…。

「柚那ならここにいるよ」

「え、ちょっとっ!」

「あんがとさん、少し付き合えよ。ゆー」

「その名前で呼ばないでよ!」
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