ずっとお前を待ってるから
呆気なく海に裏切られ冬二に腕を引かれてしまう。私はその゛ゆー゛と言う呼び名が大嫌いだった。昔男の子と間違われゆー君と呼ばれそれが原因でその呼び名が大嫌いになった。だが、唯一一人だけ私を呼び名で呼ぶ男の子がいた。それが冬二だった。

「離してよっ…!」

「…俺から何で逃げんだよ」

「べ、つに…逃げてなんか…」

「俺は、お前に会えて嬉しかったってのに…俺だけ浮かれてたんだな」

「あ…」

簡単に振り解けた腕に拍子抜け、振り向いた冬二の顔は怒りを感じるもどこか悲しそうな表情に本心を言えない自分自身に苛立ちを覚える。

「…私に会えたぐらいで…う、浮かれたなんて…」

「お前だから浮かれてんだっての馬鹿」

「…っ」

「お前は?俺に会えて浮かれたりしなかったのかよ…?」

渡り廊下には人が居なく私達だけがいるこの静かな空間でさえ逃げ出したくなるもそれよりも今まで想い焦がれていた気持ちが爆発しそうなのを抑え渾身の言葉が出てきた。

「…あ、あなたにもう一度恋するからっ!…あ」

「ふはっ…おもしれえ事言った柚那?」

「ち、ちが…っ!」

「いいぜ、俺に恋しろよ。それ以上に俺もお前を惚れさせてやる」

「う…」

私は今自分でも何を口走ったのかを理解出来なかった。私の言動に冬二は吹き出しつつも昔と違い酷く男臭い微笑みを私に向けた。
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