イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
げほげほと咳込む私に構わず、本庄さんは興味津々で顔を近付けてくる。


「そのへん聞きたいんだけど。零士のテクニックはやっぱりすごいのかとか、あの仕事の鬼がベッドの中では甘く囁くのかとか……」

「い、い、言えるわけないじゃないですかーっ!!」


怒ったように叫ぶ私の顔は、郵便ポストくらい真っ赤になっていることだろう。

仮に知っていたとしても言えるわけがないですよ!

妄想してしまいそうになるエロチックな部長の姿を、頭の中でぱぱぱっと振り払っていると、本庄さんはおかしそうにけらけらと笑った。


「ウブなのねぇ。そんな照れないで、私の前でも“部長”じゃなくて普段の呼び方してくれていいのよ?」

「あ、はぁ……」


私は微妙な笑みを浮かべて頷く。

そういえば、ずっと普通に部長と言っていたけど、会社以外では別の呼び方の方がいいのかな。彼も私のことを一葉と呼んでくれているのだし。

零士さん……って? うわ、なんか恥ずかしい。

私が密かに悶えているとは知らない本庄さんは、カウンターの上で腕を組み、前方に並ぶリキュールの瓶を見るともなく眺める。


「でも一葉さんって、嫌味がない人ね。もっと性格悪そうな女だったらいじめてやったのに」

「……そんなこと思ってたんですか」


軽くギョッとすると、彼女はいたずらっぽく笑った。

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