イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
自分に言い聞かせ、バッグを持って彼のもとへ歩み寄る。


「おはようございます」

「あぁ、おはよう」


資料から顔を上げ、仕事モードのキリッとした表情を見せる彼に、両手で持ったバッグを思いきって差し出した。


「あの……これ!」


突然目の前にそれを出された部長は、ぱちぱちと目を瞬かせる。彼の周りにハテナマークが飛び交っているよう。


「お、お弁当、忘れていっちゃったみたいなので!」


私の後ろを、興味深げに眺める池田さんが通り過ぎていくのがわかったから、つい大きめの声を出してしまった。皆の視線が集まるのがわかる。

わざとらしかったかな!? 何で普通にできないのよ、私! ていうか、これだけで部長はわかってくれるかな?

かぁっと顔が熱くなるのを自覚して、両手を伸ばしたまま俯いていると、ふっと手の重さがなくなった。


「あぁ、悪い。せっかく作ってくれたのに」


顔を上げると、バッグを受け取った部長が微笑んでいる。

どうやら私の意図は伝わったらしい……よかった。


「外食には劣ると思いますけど……」


ホッとしつつ、今度は控えめに言うと、部長はふっと柔らかな笑みをこぼす。


「一葉の愛情に勝るものなんてないだろ」


その一言で皆が色めき立つのを感じ、冗談だとわかっているのに、私の顔はさらに熱くなった。


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