イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
私が肩をすくめて謝ったのは、早乙女くんの期待に応えられないことだけじゃなく、結婚していると嘘をついていることに対して。

ここでも罪悪感が湧き上がるけれど、早乙女くんは「何で謝るの」と言って、軽く笑う。


「僕は部長のこと尊敬してるし、同じ男としてカッコいいと思うから、坂本さんが惹かれるのも当然かなって思うよ」


明るい声色と表情で紡ぐ彼の言葉は、きっと本心なのだろう。

これまで、社員は部長のことを煙たがったり恐れる人ばかりなのかと思っていたから、ちょっぴり驚きだ。……部長には失礼だけど。


「早乙女くんは、部長のこと嫌いじゃないんだ」


今だけ罪悪感は影を潜め、正直に口にしてしまった。

私からこんな一言が出るとは思わなかったのか、早乙女くんは意外そうな顔をして問い掛ける。


「もしかして、部長のことあんまり良く言わない人が多いから、結婚してるってこと隠してたの?」

「あ、あぁうん、それもあるねー……!」


とりあえずそういうことにしておこうと、私はぎこちなく笑って頷いた。

早乙女くんは口元を緩め、さわさわとそよ風に揺れる木々を眺めながら話し出す。


「強引だし言うことキツいから、誤解されてたり、ブラック上司だなんて言われたりしてるけど、部長はやっぱりすごい人だよ。誰かがミスしても、叱るだけじゃなくてちゃんとリカバリーしてくれるし。自分の意見を押し通しても、間違ったことは絶対言わないし」

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