イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
……って、何で私が嬉しくなっているの? 謎だ。

妙な心境に首を捻りつつ、再びお弁当に手をつけていると、あっという間にサンドイッチを食べ終えた早乙女くんが、手を払いながら言う。


「それにしても、部長が言ってた“俺専属のシェフ”って、あれは坂本さんのことだったのかなぁ」

「俺専属のシェフ?」


まったく耳にしたことがない単語が飛び出して、私はキョトンとする。いったい何のことだろうか。

早乙女くんは少し考えるように目線を斜め上にさ迷わせ、詳しく教えてくれた。


「入社してすぐくらいの頃かな。お客様にただ商品を提案するだけじゃなくて、“こういう料理にも使えますよ”ってレシピも提案したらいいって教えてもらったんだけど。部長すごく詳しかったから、『料理できるんですか?』って聞いたことがあって」


部長はあまり料理はできないはず。なのに、そんなに詳しかったというのはどうしてだろうか。

そんな私の疑問は、すぐに早乙女くんが解決してくれた。


「そしたら、『俺専属のシェフに知識だけ叩き込んでもらったんだ』って言ってたんだよ。それって彼女のことなのかなと思ってたからさ」

「そう、なんだ……」


私は笑顔を作ることも、嘘をつくこともできず、ただ目の前の広場を眺める。

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