イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
やっぱり特にコメントなしか……。まぁ、そうだよね。私が勝手にしたことだし、彼にとってはただお腹が満たされればそれでいいのかもしれない。

そう、それでいいのだ。けど……

何か一言くらい、欲しかった。そう思ってしまうのは贅沢なのだろうか。

少しの物足りなさを感じつつ、軽くなったランチバッグをしまっていると、中谷さんが目薬を点しながら言う。


「愛妻弁当、いいわね~。新婚の時は私も気合い入れて作ってたけど、最近じゃもう冷食頼りよ」


しらけたように笑う彼女に、私は何と返したらいいのかわからず、とりあえず笑っておいた。

結婚したら、徐々に愛情やありがたみは薄れていくのかもしれない。今みたいに、少し寂しく思うこともなくなってくるのかも。


こういうことがあるから、部長は“結婚に夢が見れない”なんて言うのかな。

元カノさんと付き合っていた間にも、似たようなことを感じていたの?

どんな恋愛をして、どんなふうに彼女を愛していたの──?


気が付けば、部長と、まだ見たこともない元カノのことを考えてしまっていて、今日は仕事に十分身が入らなかった。そのたびに、胸の奥の違和感が強くなって、苦しくなる。

私が退勤するまで部長が戻ることはなく、寂しさと安堵が混ざったような、複雑な心境のまま帰途についた。

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