イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
偽奥様への愛のムチ
九月も終わりに差し掛かり、ようやく秋めいてきた今日この頃も、私の愛妻弁当攻撃は続いている。
ひとつ変わったことといえば……。
『お疲れ、一葉』
部長の声を、こうやって電話越しに聞く機会が増えたことだろうか。
午後八時を過ぎた今、シャワーを浴びて濡れた髪を拭きながらスマホを耳にくっつけ、「お疲れ様でした」と無意識に軽く頭を下げてしまう。
いつも聞いている声も、電話だと新鮮に感じるんだよなぁと思いながら、自分の部屋のベッドに腰掛けた。
『明日は昼間出るから、弁当は作らなくていいぞ』
「あ、そうでしたね。了解です」
こんな調子で、だいたい電話でも仕事中みたいなやり取りをする。私達って、本当におかしな関係……。
仕事の都合で、部長の携帯番号は知っていたものの、プライベートでは特に使うことはなかった。しかし、お弁当を作るようになってから、今のような用件で連絡を取り合うことがあるのだ。
明日のお弁当はいらないのね。じゃあ私も久々に外食にしようかな。
なんて考えていると、彼は何気なくこんな一言を口にする。
『あれ食うと午後もやる気出るんだけどな』
……キュン。
あぁ、また胸が鳴いたよ。最近、やたらこんな音が響く気がする。
部長は、さりげなく私が嬉しくなるようなことを言ってくるから油断できない。