イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
些細なことから、今までとは少し違った気持ちで部長のことを意識するようになってしまったものの、会社では仕事のことでいっぱいになっている。
なぜなら、商品の展示会の日が目前に迫ってきたから。
ホテルの会場を貸し切って、各メーカーの営業さんが集まり、試食をしたり試供品を配ったりと、賑やかに行われる会だ。
私も新入社員だった頃、研修の一環で、取引先と同じようにお客様として展示会を見に行った。とても楽しかった印象があるけれど、今回私は受付担当。気楽に構えてはいられない。
その展示会を翌日に控えた今日も、忙しなく準備に追われている。
「中谷さん、ファインファクトリーさんがもう一枚招待状が欲しいとおっしゃってるんですけど、FAXで送ってあげればいいですか?」
「そうね、郵送じゃ間に合わないし」
明日のカタログを揃える中谷さんに口早で確認してから、保留にしていた受話器を取り、その旨を伝える。
招待状と言っても、プリントアウトした紙切れだからすぐに用意できる。入場するにはひとりにつき一枚の招待状が必要で、事前にお送りしているものの、要望があれば追加してあげるのだ。
さっそくFAXを送ろうと腰を上げると、「坂本さん」と呼ばれた。振り向けば、早乙女くんが近付いてくる。