イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「ごめん、手が空いた時でいいんだけど、この資料あと十部コピー取ってきてもらってもいい?」

「うん、了解!」


差し出された資料を受け取り、にこりと笑うと、彼も微笑みを残してすぐにデスクへ戻っていく。

忙しそうだけどいつも通り爽やかな彼を見送り、忘れないように付箋を貼っておこうと、“コピー十部”と書いていた、その時。


「はぁ? 盲腸!?」


部長の荒げた声が、オフィスに響き渡った。

皆の視線が一斉に部長のデスクに向く。彼は自分のスマホを耳にあて、とっても険しい顔をしている。

この様子に喋り方、もしかしなくても誰かが盲腸になってしまって部長に連絡を……?


「具合は? ……そうか、大丈夫か。なら明日の展示会来いよ。小沢も担当になってるだろ」


部長の言葉を聞いて、同じ営業部で二十八歳の小沢さんが朝からいないことを思い出す。

まさか、小沢さんが盲腸とは! というか、それでも明日来いと言う部長、鬼すぎる!

部長に具合を聞かれたら、そりゃ大丈夫じゃなくても大丈夫と言うしかないでしょう……。

小沢さんに同情しつつ、そして付箋を貼りつつ、電話のやり取りを聞いていると、部長の声はどんどん荒っぽくなっていく。

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