イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
しかし、部長は平静な顔で淡々と言う。


「購買部にいたお前なら、従来の商品のことはだいたい把握してるだろ。俺もなるべくフォローするから」


たしかに、スマイルではどんな商品を扱っているか、種類や数量の知識はある程度ある。けれど不安は底知れず、私は眉を下げるばかり。


「でも、私受付が……」

「それは中谷さん達に頑張ってもらう。小沢の担当はそんなに種類も多くないから、坂本でもきっと大丈夫だ」


部長はそう言い切り、中谷さんは心配そうに私を見つめてくる。

大丈夫だと言われても、私に営業が務まるとは思えない。お客様が満足するような提案を、私にできるはずがない。


「そんな、無理ですよ! 私に営業の仕事なんて──」

「やってもいないのに無理だって言うヤツ、俺は一番嫌いなんだよ」


……一瞬、息の根が止まりそうになった。

私の弱音を遮り、冷たく投げられた声が……“嫌い”という単語が、深く胸に突き刺さる。

かなりのダメージだ。本当に、心臓を一突きにされたみたい。


部長が私にこんなことを言うとは思わなかったのか、皆が言葉を無くしていた。

立ち尽くす私に、部長がゆっくり近付いてくる。顔も見れなくて、私は目線を落としたまま。

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