イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?
それに……

『俺は一番嫌いなんだよ』

さっきの一言のダメージが効いていて、仕事の件以外はまだ話す気力が出ないから。

今まであまり怒られたことはなかったとは言え、こんなにヘコんでしまうとは……。私って打たれ弱いのかな。

でも、とにかく大事なのは明日。そのことだけ考えよう！

頭を切り替えて、私も会場の準備の手伝いに戻ろうとした時、「坂本」と呼ぶ声がした。そちらを向くと、足を止めた部長が私を振り返っている。


「何か困ったら、すぐ俺のとこに来いよ。なるべくそばにいるから」


……温かみのある言葉は、まるで精神安定剤のよう。

少しだけ気持ちが落ち着いた私は、笑顔を見せて「はい」と返事をした。



会場の入口に設置された受付に戻ると、事務の女性陣がカタログの確認をしていた。私に気付いた中谷さんが、「お疲れ様」と微笑む。


「ほんと奥さんにまでも厳しいのねぇ、部長は」

「あはは……」


パンフレットとメモを持つ私を見て言う彼女に、苦笑を返す。


「でもきっと、一葉ちゃんにひとりの部下として成長してほしいって想いも込めてるのよ」


心優しい中谷さんの言葉は、ありがたくもあり、少し切なくもあった。

ひとりの部下。私は彼にとって、それ以上でも以下でもない。

そう思うと胸が痛んでしまうのはなぜなのか……今は必死に考えないようにしていた。


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