イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
まったく知らなかった事実に唖然としていると、彼はクスッと笑いをこぼして、私も覚えていない電話対応のことについて話を続ける。


「あの時、おそらくウチでは取り扱っていない商品のことについて聞かれてたと思うんだが、お前はただ“ない”って言うだけじゃなくて、“似たものならこういうのがありますよ”とか、“これはどうですか?”って聞いてた」


言われてみれば、そういう用件の時は代替えの提案をしている。ただ取り扱っていないと言うだけでは相手も困るかなと思って、なんとなくそうしているだけなのだけど。


「一歩先を行くってのは、相手が求めるもの以上の提案をする。つまり丁寧な対応をするってことだ。お前は自然とそれができてる」


それは、自分ではまったく意識していなかったこと。誰かがそれを見付けてくれていたことに、感動すら覚える。

真摯な表情の部長と視線を絡ませたまま、私はトクトクと鳴る鼓動を感じていた。


「その仕事ぶりを見てて思ったんだよ、コイツに営業も任せてみてぇなって。だから、昨日はつい挑発するようなこと言っちまった。悪かったな」


くしゃっと髪に手を潜らせ、罰が悪そうな顔をする部長。こんな表情は初めて見る。

なんだか、少し嬉しい。昨日受けたショックも、今はすっかり回復してしまった。

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