イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
なぜか少し鼻の奥がツンとして、それをごまかすように、目を逸らしたままの彼に茶化してみせる。


「“可愛い子には旅をさせよ”ってやつですか?」

「あー、それそれ」


なんかテキトーな返事だな。なんて思いながらも、彼の考えを知ることができたことが嬉しくて、私はクスクスと笑った。

ふいに、部長の手がこちらに伸ばされてくるのが視界に入ったかと思うと、ぽんっと私の頭に乗せられる。

大きな手の温もりと重みにドキッとして目を開くと、彼は初めて話した時のような優しい笑みを浮かべて言う。


「お前を選んでよかった。……“嫌い”だなんて嘘だよ」


──じわっと、瞳に急激に熱いものが込み上げる。

無事に任務を終えた開放感とか、期待に応えられたことの嬉しさとか。いろいろな感情が一気に溢れたのだろうけど、でも。

何よりも大きいのは、部長に嫌われていないのだとわかった安堵感。


今、はっきり確信してしまった。

胸がキュンとするのも、痛くなるのも、全部この人のことが好きだから──。

彼を落とさなければいけないはずが、私が先に落ちてしまったらしい。


溢れる涙を止める術がなくて、ぼろぼろとこぼれさせる私に少し驚いたらしく、一瞬頭から手が離された。

けれど、すぐにまたぽんと乗せられ、今度は包み込むようにしっかりと撫でてくれる。

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