イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
そしてフッと鼻で笑った。呆れたような、それでいて優しげな笑い方。


「何で泣く。夫婦ゲンカだと思われるぞ」

「思われてもいいです……」


涙を拭いつつ、涙声で呟いた。

会場にはまだたくさんの人がいて、いくら皆が作業しているとは言え、私達の様子に気付かないわけがない。こんなところ、見られたくはないけれど……。

私達が本当の夫婦だと思われることは、嫌ではない。

部長のたったひとりの大切な人になりたい。そう、本気で願ってしまっているから。


恋に落ちたのだと頭で自覚したのはいいけれど、心はそれに対応できなくて動揺しまくりだ。

涙は出るわドキドキするわで、身体がおかしなことになっていると、いつの間にかテーブルを回っていた部長が間近に来ていた。


「じゃあ……」

「ふぇ?」


何かを言おうとする彼を見上げようとした瞬間、後頭部を手で支えられ、そのままぐいっと引き寄せられる。

彼の胸に、おでこがトンとぶつかった。大きな衝撃が来たのは、その額ではなく胸の奥。

ぶ、部長、何して──!?


「皆に、仲直りしたって思わせとかないとな」


少しいたずらっぽく、甘い囁き声が鼓膜を揺すり、私はさらに心臓をバクバクと踊らせる。

こんな大胆なことしちゃって……あなたをもっと好きにさせちゃって、どうしてくれるんですかー!!


周りの目が気になるのと恥ずかしさで、私は沸騰しそうな顔を彼の胸に埋めたまま、ただただ硬直していた。




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