イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
色っぽく感じる吐息混じりの声が、私の心臓をドックンと動かした。


アノヨル……あの、夜。

──薄暗いバー、琥珀色の液体が揺れるグラスを持つ骨張った手、耳に心地良い低くなめらかな声。

それは今聞いている声と同じなのに、どこか違った色をしていて、私に甘い余韻を残した。


一瞬にして、約ニヶ月前の記憶が蘇る。

飲み会で友達が結婚するという話を聞いて、元から結婚願望が高かった私は悪酔いし。その勢いで、偶然居合わせたこの部長様に……

あぁぁ、あんな恥ずかしいことをしてしまったのは人生初よ!


穴があったら地中深くまで入りたい気持ちになりながら、肩をすくめて俯く。


「忘れられるものなら忘れたいです……」

「諦めろ。お前の乱れた姿は、俺の頭ん中にしっかり焼き付いてる」


クッ、と意地悪な笑みを浮かべる彼は、どれだけ私の羞恥心を煽ってくるのだろうか。

あーもう、あの時のことは蒸し返さないでほしかったのに……! と言っても、無理な話だろうけど。

悶々とした気持ちを振り払おうと、ぶんぶん頭を横に振る私を見て、部長はおかしそうに笑った。


「だからさっきは、結婚願望ありまくりの乙女ちゃんに夢見させてやったんだよ。どうだ? 旦那様に助けてもらった気分は」


片手をポケットに突っ込む彼は、完全に私をからかっていて、ムッと頬を膨らませる。けど……。

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