イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「あと何も知らないのは支店長だけど、あの人そういうことに関しては劇的に鈍いからな」

「そ、そうなんですか」


部長が淡々と言うから、ちょっと吹き出しそうになってしまう。

五十代半ばの支店長は、のほほんとした性格でおっとりしたオジサマだから、たしかにそんな感じはする。

でも、いくらそんな支店長でも、私達のことを知ったら黙ってはいないんじゃないだろうか。

私の考えを読み取ったように、部長は軽い調子で言い放つ。


「ま、支店長にバレた時は終わる時だ」


終わる時──そう、それはいつか必ず来る。

その時のことを考えると、どんな罰を受けるかという不安と、部長のそばにいられなくなる切なさしかない。


この関係を始めた当初は、そこまで問題は起こらなさそうに思えた。けれど、そんな考えは甘かったと痛感している。

嘘だとバレたら、周りからの目も変わるだろうし、信頼を失うかもしれない。そんなリスクを侵してまで、部長が私とこんな関係を続けるのはどうしてなのだろう。

『切り抜ける自信はある』、『バレたら俺が責任取る』なんて言っていたけど、本当にその時が来たらどうするつもりなのよ……。

ぐるぐると考えを巡らせていると、さっきまでの楽しい気分はどこかに行ってしまい、ブーティーのつま先に目線を落としてため息をついた。

< 142 / 320 >

この作品をシェア

pagetop