イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
すると、ぽんぽんと頭に大きな手が乗せられる。


「そんな寂しそうな顔するなよ」


柔らかな海風で髪を揺らし、クスッと笑う彼が私を覗き込んでいて、胸がきゅっと締めつけられる。

「し、してませんよ!」と返し、ぷいっと海の方へ顔を逸らした。


本当は図星だ。

バレたらどうなるかという不安と同じくらい、もしかしたらそれ以上に、彼との関係を終わらせることの寂しさも大きいのだから。

部長を好きだという想いは膨らむばかりで、その分切なさも膨れ上がる。この胸をもどかしくさせる手の温もりも、たまに見せる優しい笑顔も、私だけのものなのは今のうちだ。


ハッピーエンドを目指すには彼を落とすしかないけれど、そんな自信なんて本当はこれっぽっちもない。

だから、いけないことだとわかっていても、この関係をやめたくない。

このまま、彼の一番近くにいたい。偽りの関係でも──。


こんな不真面目なことを真剣に願っているなんて、部長が知ったら笑うんだろうな。彼の本心はまったく読めないけれど……。

なんだか決まりが悪くて、しばらく部長の顔は見られず、周りの景色とランチができそうなレストランばかりを目に映していた。


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