イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
状況を理解した私の頭上から、呆れたような声が降ってくる。


「お前、ボケッとしてんなよ」

「ご、ごめんなさい!」


ここは田舎じゃないんだから、道端で立ち止まってちゃ迷惑ですよね……。

怒られてはいないけど、決まりが悪くて少し肩をすくめていると、握ったままの手にきゅっと力を込められるのがわかった。


「ほら、さっさと歩け」

「っ、はい……!」


無愛想な顔をしている零士さんだけど、引っ張ってくれるその力は優しい。

うそ……手繋いでくれてる!

内心キャーキャー言いながら、みるみる火照る顔を俯かせて歩き出した。夜景を見る余裕は呆気なくなくなり、ぬくもりに包まれた手に意識が集中する。


さっきの一言はものすごく気になる……けど、もう聞けるはずもなく、それからは関係ない話しかできなかった。

でも、今日は一歩どころか、五歩くらい前進した気がするから良しとしよう。

彼と休日を過ごせて、プライベートの話もたくさん知ることができて、最後にこんなに嬉しいご褒美をもらえた。十分すぎる一日だった。


彼の本心も、いつか暴いてみせる。

留まるところを知らない好きの気持ちと野望を抱き、残りのふたりきりの時間も、惜しみつつ最後まで満喫した。




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