イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
偽装夫婦はこうして始まった
部長に続いてオフィスに戻ろうとしたけれど、会社の駐車場の手前で、彼は思い出したようにこう言った。
『まだ昼飯食ってないんだろ? 少し遅れたっていいから休んでこい』と。
残業はサービス精神で、なんて言っているらしい部長様にしては意外な優しい言葉だ。
どうしようと一瞬迷ったけれど、お腹の虫は正直に鳴くので、お言葉に甘えて再びパン屋に足を向けていた。
残念ながらクロックムッシュは売り切れ。でも、ちゃんと食料にありつけただけでありがたい。
部長は遅れても構わないと言ってくれたけど、やっぱり時間は気になってしまう。パン屋さんのイートスペースで早めに食べ終え、足早に社へ戻った。
社員の駐車場に面した横長の配送センターには、パンフレットと同じく、ニコニコマークが描かれたトラックがニ台停まっている。
そこに荷物を乗せ、忙しく動いている配送部の人達を見ながら、センターの隣に併設された建物のドアを開けた。
一階は、一週間前まで私がいた購買部と総務部のオフィスになっている。この波月支店の社員数は四十人ほどで、そのうち営業部で働いているのは十一人だ。
二階へ上がり、その営業部のオフィスのドアを開けた瞬間。