イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「料理教室もやりたかったって言ってたくらいだから、人に教えるのが好きなのかもしれないわね」

「あぁ。きっと料理も教えてもらえるよ」


ご両親ふたりがにこやかに話すのをふむふむと聞いていると、隣で呟く声が聞こえてきた。


「……それは一葉には必要ねぇよ」


料理に目を落とす部長だけど、口元にはかすかに優しげな笑みが浮かんでいて、胸がトクンと鳴る。

私に料理の手ほどきが必要ないということは、部長は満足してくれているのだと解釈していいんですよね……?

思わず綺麗な横顔を見つめてしまっていると、ピンと来た様子のお母様も、まじまじと彼を見る。


「一葉ちゃんの手料理を食べてるの? てことは……やっぱりふたりはそういう関係なのね!? あらまぁ~」

「いや、違っ……何て言うか、そのー……!」


口元に手をあてて、ぽっと頬を染める彼女の誤解を何とか解こうとするけれど。

手料理を振る舞っているのは事実だし、かと言って付き合っているわけではないし、偽装夫婦を演じているだなんて言えたもんじゃないし……!と、ぐるぐる考えて口ごもってしまう。


「照れるな照れるな。いいなぁ若いモンは~」


ヨシさんはそう言って奥様とニンマリし合っているし……。部長、知らんぷりしてないでなんとかしてくださいよ!


こんな調子で、笑いが絶えない賑やかな食事会は、その後もしばらく続いたのだった。




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