イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?
「いや、もしかしたら見間違いかもしれないし、余計な心配はかけさせない方がいいだろうし……」


ぶつぶつと呟く本庄さんを首をひねって見ていると、彼女の大きな猫目が、私の後方のどこかを追っていくように動く。そして。


「…………あ」


そう声を漏らすと同時に、さらに大きく目が見開かれた。どうしたんだろう、と私も振り返って彼女の目線の先を追う。

そこで目に飛び込んできたのは、駐車場に向かって歩く坂本部長の姿。彼が向かっていく先には、パープルの軽自動車の脇に立つ、ひとりの女性がいる。

数十メートル離れたここからだと、はっきりと顔はわからない。けれど、ストレートの長い黒髪で上品な服装の、ほっそりした人だ。

その姿を認識したとたん、ドクンと心臓が嫌な音を立てる。


「あの女の人、まさか……」

「……元カノだわ」


本庄さんの口から低いトーンで呟かれた一言が、ずしりとした重みを持って私の中に落とされた。

やっぱり、あの人が元カノ……。どうしてここにいて、部長と会っているの？


ドクドクと鼓動が速くなる中、ふたりから目を逸らせずにいると、部長がポケットから出した何かを渡し、それを受け取った彼女は笑顔を見せる。親密そうなのは明らかに思えた。

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