イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?
心苦しそうに眉を下げる本庄さんは、私のことを考えて悩んでくれていたのだとわかる。

彼女の心遣いに感謝しつつ、もうこれ以上気を遣わせまいと、私はなんとか明るい声と笑顔を取り繕う。


「……そうだったんですね！　なんか、気を遣わせてすみません」

「や、それは全然いいんだけど」


本庄さんが軽く首を振った時、「本庄、そろそろ行くぞー」と、配送部の男性社員が声を投げ掛けた。

はっとして返事をした彼女は、私に向かって両手を合わせる。


「ごめん、時間切れ」

「いえ、忙しい時にすみませんでした！　私も急がなきゃ」


腕時計を見ると、すでに業務開始時刻の五分前になっていた。

鼓動が乱れたまま、急いでオフィスに向かおうとすると、「一葉ちゃん！」と呼び止められる。振り向くと、本庄さんが心配そうに言った。


「何か事情があってのことかもしれないから、ちゃんと話し合った方がいいわよ。あなたは奥さんなんだから、心に余裕を持ってね」


彼女は最後に頼もしい笑みをわずかに見せ、車に乗り込んでいった。

以前は部長のことを好きだったのに、こうやって励ましてくれるなんて、本当にいい人だ。けれど……さらに胸が痛む。

私はそんな言葉をかけてもらっていい立場じゃない。余裕なんて少しも持てないし、彼を追及する権利もない。

私は、密かに彼に恋心を抱く、ただの部下なのだから──。


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