イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「営業ってのは、商品の前にまず自分を売り込むのが基本だって教えたよな? もっかい配送業務からやり直すか?」

「はいっ……あ、いや、配送は……!」


テンパる池田さんは頷いたり首を振ったりと忙しい。部長は怒りを滲ませて話し続ける。


「パンフレット届けるだけでも、誠意を見せるチャンスだっつーのに、お前はそれを無にしたんだ。自分の担当は責任持って受け持て! ……って、入社何年目のヤツにこんな話してんだ俺は!」


勢い余って自分につっこんだらしい部長は、頬杖をついていた拳でドンッとデスクを叩く。

半泣き状態の池田さんはビシッと背筋を伸ばし、「五年目です、すいませんっ……!!」と、謝り倒していた。

なんか、体育会系の部活で先輩に怒られる後輩を見ているよう……。ちょっと池田さんが哀れに思えてくる。


張り詰めた空気の中、深く息を吐き出した部長は、座ったままパンフレットらしきものを池田さんに向けて掲げる。

ササッと駆け寄る彼に、落ち着きを取り戻した声で言う。


「栄さんが新たに商品取ってくれるってよ。チェックしてあるから、お前が見積書作成するとこからやれ。いいな?」

「は、はいっ! 必ず……!」


池田さんは賞状を受け取るように両手を伸ばし、また深く頭を下げた。

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