イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?
そういえば部長、ちゃっかり栄さんから商品を取ってもらうように話進めてたんだった……。さすがです。


そんな彼のお説教はなんとか終息したらしく、池田さんはすごすごと自分のデスクに戻っていく。私も大きく息を吐き出して、部長と同じ島の、一番ドアに近い席にようやく腰を下ろした。

すると、隣の席の四十代後半の女性、中谷（なかたに）さんがこそっと私に話し掛けてくる。


「お疲れ様、一葉ちゃん。災難だったわねぇ。話は部長のお説教聞いてたからだいたいわかったわ」

「あ、はは……」


気の毒そうにする中谷さんに、私は苦笑を返した。

彼女の斜め後ろに見える部長は、もうすっかり仕事モードに戻っている。


「池田くん最近ちょっとたるんでるみたいだったから、いいお灸になったんじゃないかしら」


いたずらっぽく笑う中谷さんは、お茶目な奥様という感じの人。見た目も実年齢より若く見えて、可愛らしい。

異動初日から快く仕事を教えてくれているし、心細かった私に元気をくれた、とってもありがたい存在のお方なのだ。


本来なら私がやるはずの見積書をさっそく作り始める池田さんを一瞥してから、また中谷さんと目を合わせて苦笑いした。

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