イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?

宴会場に戻り、部長が開けた障子から中を覗くと、まださっきと同じように盛り上がっていて、皆帰る気配はない。

おや?と思っていると、部長は「ここで待ってろ」と言い、ひとり中へ入ってしまう。しばらくすると、自分の荷物に加え、私のコートやバッグも抱えて戻ってきた。


「ほら」

「ありがとうございます……! あの、私達だけ帰るんですか?」


荷物を受け取った私は、キョトンとして彼を見上げる。

私達は会社からマイクロバスに乗ってここまで来た。帰りも皆と一緒じゃなければいけないんじゃ……という疑問をすぐに読み取ったらしい彼は、コートを着ながらいつもの声色で言う。


「もうすぐ終わるしいいだろ。タクシー呼んであるから、そのままお前の家まで送る」


えぇ、また送ってもらうなんて申し訳ない! ここからだと軽く三十分はかかるし……。

私は慌てて両手を前に出し、遠慮しようとする。


「そんな、大丈夫ですよ! 今日はほら、ちゃんと記憶もあるし、ひとりで帰れま──」

「男に抱かれてたヤツが何言ったって説得力ねぇんだよ」


再び鬼のような形相でぴしゃりと放たれた一言は、簡単に私を黙らせた。

たしかにそうなんですけど……そんなに怒らなくてもー!

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