イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
今までずっと強引だったくせに、どうして今そんなことを言うの? やっぱり、部長にとってはただのお遊びだった?

肺に空気がなくなったみたいに息苦しくなる。でも、素直に“はい、わかりました”だなんて言いたくない。

好きな人なんて、部長以外にできるわけないんだから──。


やけに明るい蛍光灯の下、「じゃあな」と言って踵を返そうとする彼の腕を、私はとっさに掴んだ。


「勝手に決めないでください」


少し怒ったような、愛想のない声がこぼれた。怪訝そうにする彼を、強気な瞳で見上げる。


「私は、終わりにしたくないです。こんなのダメだってわかってるけど……やっぱりまだ諦められない」


なぜかじわりと目頭が熱くなる。

元カノとのこともあるけれど、まだふたりの間に何があるのか、はっきりわかったわけじゃない。

身を引くには早いだろう。まだ自分の気持ちも伝えていないのだから。

“やってもいないのに無理だと言うヤツは甘い”──それは、今の私にとっても言えることだ。


「一葉……」


戸惑うような表情で私を見下ろす部長を、潤んだ瞳で見つめ、すうっと息を吸い込む。


「部長……落ちてください、私に」


掴んだままだった彼の腕を、さらにぎゅっと握り、震える声で懇願した。

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