イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
告白ではないけれど、まだ残っている酔いが手伝って、大胆なことを言わせたのかもしれない。


一瞬、彼の瞳に熱が宿ったように見えたその時、私の手から彼が鍵を奪う。驚く間も与えず鍵とドアが開けられ、私は中へ引き込まれた。

暗い玄関に入り、ドアが閉まった瞬間──唇が、柔らかなぬくもりで塞がれた。


「っ──!?」


真っ暗で、何も見えない。感じるのは、唇に触れる熱と、掴まれた手首の圧迫感だけ。

力が抜けたもう片方の手からドサリとバッグが落ち、次第に慣れてきた目に、閉じられたまぶたが映る。

な、に? どうなってるの?

私、部長に、キスされてる──!?


この状況が現実だと認識できないまま、ゆっくり唇が離された。

リビングの方から漏れる月明かりで、彼の瞳がうっすらと開かれるのが見え、止まっていたも同然の心臓が、ドックンと激しく動き出す。

何も言葉を発することができず、ただ呆然とする私に、部長は少しだけ困ったような、セクシーさを感じる笑みを見せる。


「お前、いつの間に偏差値上げたんだ? あんな顔ができるなんて」

「ど、どんな……」

「衝動的にキスしたくなるような顔」


そんなふうに言われると、穴に埋まりたいくらい恥ずかしくなってくる。今、電気がついていなくてよかった。

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