イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?
畳み掛けるように口にされた彼の一言が、妙に威圧感があって、私の笑顔が固まる。

表情も険しくて、なんだかいつもの早乙女くんじゃないみたい……。

笑顔を消して少し戸惑う私に、彼はあの日見た事実を暗い声色で告げる。


「僕、帰る前に駅で部長らしき人を見たんだよ。長い黒髪の女の人といたけど……たぶん、見間違いじゃないと思うんだ」


ドクン、と重い鉛が胸に落とされたような感覚がした。

部長は、やっぱり元カノと会っていた。その事実を再確認させられたショックと、もうひとつ重大な問題が浮上したことで。


早乙女くんは私達のことを疑っているようだった。あのキスが衝撃的すぎて頭から抜けてしまっていたけれど、これはかなり危機だ。

さっきの私の発言と、彼の目撃情報から、あの夜私と部長が一緒にいなかったことは明白だもの。


「ねぇ」と声がかけられ、はっとした私は手にしていた用紙を落としてしまった。パサッと床に散らばるそれを目に映す私の耳に、早乙女くんの真剣な声が響く。


「一葉ちゃん達って、本当に結婚してるの？」


……“そうだよ”と、嘘を貫き通せばいいのかもしれない。けれど、もう出まかせの言葉は喉に詰まって出てきてくれない。

押し黙って俯くだけの私に、早乙女くんが近付く。そして身を屈めると、落とした用紙を広い集めてくれる。

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