イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?

『一度勇気出して婚活してみなって。お姉ちゃんみたいな恋愛偏差値低めの人は、そういう場に頼っても全然恥ずかしくな──』

「ご心配なく。婿候補はいますから！」


我慢ならなくなった私は、彼女の言葉を遮り、大口を叩いていた。

だって、部長様がいるから。婿になってもらえる気配はないけど、一応『考えてやってもいいぞ』と言われているのだから、まったくの嘘ではない。はず。

そのことがよっぽど衝撃的だったのか、電話の向こうはやけに静かになった。数秒の間を置いて、すっとんきょうな声が響く。


『……えっ!?　うそっ、ホント!?』

「もう切りまーす。じゃーねー」


棒読みで言い、もうこれ以上妹の嫌味は聞くまいとスマホを耳から離す。


『ちょ、待って！　どんな人よ、イケメン!?　ていうかそれ本当に三次元の人!?　ねぇお姉ちゃ──』


トン、と画面をタップして通話を終了し、叫び続ける花苗の声は容赦なく断ち切った。

ほんと失礼な……いくら意地張ってても、二次元のキャラクターを婿候補にするほどじゃないわよ。まぁとりあえず、適当にあしらっておいたからいいや。

そう軽く考えて、暖かくなってきた部屋で夕飯の準備を始めた。