イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
会議室での秘め事
考えた結果、やっぱり嘘をついているのは良くない、正直に“まだ紹介できる人はいない”と言って謝ろうと決めた。
夜にでもまた電話しようと思いながら出社した、翌日の火曜日。朝一でメールのチェックをした後、コーヒーを入れるために給湯室へ向かう。
営業部のオフィスを出て向かい側にあるそこは、IH調理機やレンジが置いてあるだけの小さな空間。部長がいる日の朝は、ここでコーヒーを淹れるのが日課となっているのだ。
中谷さんも他の営業マン達にお茶汲みをしてあげているけれど、部長にだけは『一葉ちゃんの役目だから』と言って遠慮している。
それは全然構わないのだけど……数日前にキスをしてからというもの、どうにも顔を合わせるのが気まずい。今週の木曜と金曜は、部長は出張で不在だから、正直少しほっとしている。
でも、仕事中にそんなことを引きずっていたらいけない。コーヒーのほろ苦い香りを嗅ぎつつ気を引き締め、彼のマグカップを持ってオフィスに戻った。
部長のデスクに向かうと、仕事モードの彼はどこか難しそうな顔をして資料と睨めっこしている。
「どうぞ」と言って、彼の斜め手前にカップを置きながら、なんとなくデスクに広げられた資料を見た。