イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「お、サンキュ」

「もうバレンタインですか」


顔を上げてお礼を言った彼に、私は思わず普通に話しかけていた。部長が見ていたのは、チョコレートや冷凍のケーキなど、まだ二ヶ月先のバレンタイン仕様のカタログだったから。

一度私を見上げた彼は、「あぁ」と頷き、再びカタログに目を落とす。


「来月、各施設にバレンタイン向けの商品を提案する予定でいる。チョコレートや生クリーム、カットケーキやその他諸々、デザートに関するものが主だ。……が、デザートの他にもバレンタインっぽい料理はないもんかと思ってな」


部長は手にしていたカタログをデスクに放り、腕を組んで椅子に背中をもたれた。トレイを抱えてその様子を眺める私は、疑問に思ったことをそのまま口にする。


「バレンタインって言ったら、やっぱりチョコレートを使ったスイーツですよね。何で料理なんですか?」

「レストランやなんかはいいが、老人ホームや病院の利用者は与えられたものを食べるしかない。甘いものが苦手な人は、それが出てきたって嬉しくないだろ」

「あ……」


彼の言うことを聞いて、たしかに、と納得する。

甘党の人ならスイーツが出されたら嬉しいけど、そうでない人にとっては、料理を凝ったものにしてもらった方が喜ばれるかもしれない。

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