イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
気だるげに片手をポケットに突っ込んだ彼の言葉で納得し、脱力した。

そうか、お父さん我慢できなくて即言っちゃったのね……。それが部長の耳に入ったと。


「お父様繋がりでしたか……」

「どうせ意地になって大口叩いたんだろ」


さすが、エセ旦那様はよくおわかりで。

ぐうの音も出ず、うなだれる私とさらに距離を詰め、目の前に来た彼が他人事のように聞いてくる。


「で、どうすんの?」

「……正直に言います。嘘ついたこと」


ラベンダー色の格子柄ネクタイを目に映し、ため息混じりにこぼすと、上からこんな言葉が降ってきた。


「その必要はない」


「へ?」と気の抜けた声を漏らして顔を上げると、彼は不敵な笑みを浮かべて私を見下ろしている。


「俺がなってやるよ、婚約者に」


思いもよらないお言葉に、目が点になる私。

婚約者のフリをしてくれたら、その場は切り抜けられるだろうから助かるけど、お父さん達は私達が本当に結婚を考えていると信じちゃうじゃない。それよりまず、なぜそんなことをする気に?


「な、何で……?」

「この唇を奪った詫びに」


──ふいに親指で唇をなぞられ、ドキンッ!と心臓が跳ね上がった。

頭の隅に追いやられていたキスを突然思い出させられ、一気に顔に熱が集まる。

< 219 / 320 >

この作品をシェア

pagetop