イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
硬直して真っ赤になっているだろう私を、部長は意地悪な笑みを湛えながら見つめる。


「疼かせたままにして悪かったな」


どこか艶めかしい声色で言われ、とっても恥ずかしくなった私は、ふいっと顔を背けた。


「べ、べ、別に全然、全っ然平気ですから!!」


思いっきり否定したら、それが逆に嘘っぽくなってしまった……。実際嘘なんだけど。全然平気なんかじゃないんですけど。

……ていうか。“詫び”って何?

やっぱりあのキスはただの酔った過ちみたいなもので、何の気持ちも込められていなかったということ? その償いで婚約者のフリをするだなんて、めちゃくちゃだよ。

そもそも、お詫びなんてしてほしくない。そんなことされても、惨めになるだけだ。

顔の熱は引いて、今度は頭に血が上ってくる。眉根を寄せて、キッと部長を睨んだ。


「せっかくですけど、お詫びなんかしていただかなくて結構です! ……もう、嘘はつきたくないので」


毅然とお断りすると、「失礼します」と言って踵を返し、そのままドアの方へ向かう。

しかし、出ようとしたところで、背後からやってきた部長の手が伸ばされ、ドアが押さえられてしまった。

背中に、触れそうで触れない彼の気配を感じて、胸が騒ぐ。

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