イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?
私が怒っているのをわかっているはずなのに、彼は平然とこんなことを言う。


「指定されたのは土曜なんだよな？　ちょうど空いてるから、午前十一時に迎えに行く」

「っ、だから、いいって言ってるじゃないですか！」


思わず声を荒げながら、身体を捻り、再び険しい顔で部長を見上げた。それでも彼は余裕そうで、私だけ熱くなっているのが悔しい。

唇を噛みしめ、今度はなんとか抑揚を抑えて、ずっと心に引っ掛かっていたことをついに口にする。


「部長……元カノと会ってるんでしょう？」


その瞬間、漆黒の瞳が揺れたのを、私は見逃さなかった。

さすがに予想外だったらしく、彼は表情を強張らせて言葉を少し詰まらせる。


「何で、そんなこと……」

「忘れられない人がいるなら、もう私のことは構わないでください。からかわれるのは、辛いんです……」


怒りよりも切なさが襲ってきて、込み上げるモノで視界が揺れる。

好きだから、周りに嘘をついてでもそばにいたいと思った。だけど今は、それがすごく苦しい。彼を愛しく想う気持ちが募るたび、それに比例して苦しくなるんだ。

今が言うべき時かもしれない。ゲームオーバーにする一言を。

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