イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
手が離されると、私は両手で頬をさする。いまだ涙目で不満げに見上げると、部長の怒りはすでに薄れているように見えた。


「おとなしく待ってれば、俺の考えを教えてやる。知りたくないのか?」


どこか色っぽさを感じる低い声とともに、人差し指で目元をそっと拭われ、私の心臓は素直にドキンと反応する。

……ズルいよ、本当に。今の言い方も、優しい仕草も。

そんな気になることを言われたら、従順に待つしかないじゃない。当然知りたいもの、部長の頭と心の中がどうなっているのか。

終わりにするのは、彼の本当の気持ちを知ってからでもいいだろうか。


「……わかりました。待ちます」


しっかりと目を見据えて返事をすると、斜めに流れる前髪から覗いた瞳が、柔らかく細められる。


「ヨダレ垂らすなよ」

「犬扱いしないでください」


速攻でツッコミを入れると、部長はおかしそうに笑い、ぽんぽんと私の頭を撫でる。そしてドアを開け、さっさと出ていってしまった。


ダメだ……結局私はあの人の手の平の上で転がされてしまう。

でも、終わりが近付いているのは確実。いったいどこで分岐を間違えたんだろう。

もうコンティニューできないリアルな世界を恨めしく思い、私は大きなため息を吐き出した。




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