イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
翌日の金曜日の休憩中もデスクに座り、ノートをまとめていた。もう少しで納得のいくところまでになるのだけど。
「うーん、目が疲れる……」
やっぱりきちんと休憩は取った方がいいなぁと実感しながら、指の腹でまぶたの上を軽く押す。
コーヒーぐらい淹れるか……と思い立ち、伸びをしてから腰を上げると、給湯室に向かった。
給湯室の前まで来ると、どうやら先客がいるらしく、中から女性の話し声が聞こえてきた。
中は三人以上入れば窮屈になってしまうくらいの狭さだから、また後にしようかな。そう思って、オフィスに戻ろうとした時。
「えっ、結婚してない!?」
中から驚きと戸惑いに満ちた声が聞こえてきて、私は思わず足を止めた。
今の声、中谷さん?
誰のことを言っているのか、心当たりがありすぎて胸がざわめく。周りに人がいなくなった隙に、そっとドアに近付いて耳を澄ませてみた。
「嘘でしょう? どこの情報よ」
「総務の知り合いが言ってたの。最近結婚した社員から提出してもらった婚姻届受理証明書を整理してたらしいんだけど、坂本部長のはどこにも見当たらなかったって」
興奮気味に話すのは、おそらく同じ営業事務をしている丸山さんだろう。彼女の話を聞いて、私の中に焦りが滲み始める。