イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「これからもし部長とのことで変な噂が耳に入っても、気にしちゃダメよ」

「えっ……?」


顔を近付けて、コソッとそんなことを言われ、私は拍子抜けしてしまった。丸山さんのように疑うのは当然だし、中谷さんにも責められても仕方ないと思っていたから。

ぽかんとする私に、彼女はふっと苦笑を浮かべる。


「ちょっとくだらない噂を耳にしちゃってね。あることないこと、いろいろ言う人がいるみたいなの。あなた達夫婦はお似合いだから、やっかんでるだけよ」

「中谷さん……」

「ごめんなさいね、突然変なこと言って。でも、私はあなた達の味方だから」


ぽんぽんと私の背中を叩いた彼女は、にこりと微笑みかけると、すぐに自分のデスクに向き合った。

中谷さん……私達のことを信じてくれているんだ。

罪悪感で、胸がぐっと締めつけられる。本当のことを知ったら、きっと軽蔑するだろう。

これが罰なのだ。軽々しく部長の奥さんを演じてしまった、私への……。



それから仕事を再開しても、重苦しい気持ちは一向に軽くならなかった。明日、部長との関係を解消しても、これは変わらないだろう。

でもよくよく考えたら、私達が偽装夫婦をやめた際には、皆に何て説明するのだろうか。

“スピード離婚しました”とか?

結婚もしてないのに、皆の中での私の経歴にはバツがつくことになるんだ…………嫌すぎる。

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