イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
……きっと、このままずっと一緒に生きていけるだろう。桐絵となら。

あの頃の俺は、漠然とではあるが、今では考えられないほど素直に、彼女との将来を思い描くことができていた。ふたりで暮らし、子供ができ、共に年老いていく未来を。


しかし、平和な日々が二年ほど続いたところで、俺は徐々にある異変に感づき始めていた。

桐絵が妙によそよそしくなる時がある、と。

桐絵が働くレストランに、たまたま兄貴と食事をしに行った時や、俺のマンションに兄貴が来て、彼女も一緒に宅飲みをした時。彼女は、なぜだか俺に気まずそうにしているように見えたのだ。


──彼女の様子がおかしい時には、決まって兄貴がいる。

その共通点に気付くのに、時間はかからなかった。きっと桐絵は、兄貴に惹かれているのだろう、ということにも。

彼女を問い質すと、やはり答えは俺の予想通り。


『いけないってわかってるのに、どうしても好きって気持ちを消せなくて……。ごめん……ごめんなさい、零士くん……!』


桐絵はとても苦しそうに、泣きながら本心を吐き出していた。誰にも言えずに、ずっと悩んでいたらしい。

もちろん兄貴にも気持ちは伝えていないようだったが、人の心情を敏感に汲み取れる彼なら、おそらく気付いていたのではないかと、俺は思う。

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