イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
桐絵の気持ちが離れていると確信した時、俺は悔しさでいっぱいだった。

相手は自分の兄。同じ血を分けた奴に、愛し合った女を持っていかれるなんて、負けたような気がしてならなくて。

躍起になって、桐絵の心を取り戻そうとすればするほど、俺達の溝は深まる一方。兄貴ともぎくしゃくして、釈然としない日々が続いていた。


とにかく仕事をすることで気を紛らわせ、気が付けば次期部長と言われるまでになっていた。

その頃、新卒で入ってきた早乙女に、桐絵のことを“俺専属のシェフ”だなんて言ったのは、彼女を自分のものにしておきたい独占欲の表れだったのかもしれない。

そんなことを言っても、虚しくなるだけなのに。


そうしているうち、学生時代からの友達の中で、結婚する奴もちらほら出てくる。

式に呼ばれて幸せそうな彼らを見るたび、自分と桐絵を重ね合わせては差異を感じる。淡くではあるが、俺だけが彼女との結婚を意識していたことも、ひどく虚しく思った。


そんな時、昔は営業もしていたらしく、入社した頃から俺に目をかけてくれていた佐原さんに誘われ、ふたりで飲みに行ったことがある。


『最近、お前働きすぎじゃないか? がむしゃらにやってると、後でエネルギー切れになるぞ』


居酒屋のカウンターに並んで座る彼にそう言われ、あぁ心配してくれているんだなと感じた。

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