イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
彼の左手の薬指に輝く指輪が視界に入り、それから目を逸らして呟く。


『……やりたいからやってるんですよ』

『それも嘘じゃないだろうが、何かあったんだろ、プライベートで』


ピクリと反応した俺に、佐原さんはなぜか得意げにこう言った。


『男が仕事に必死になる時は、大抵家族か女が絡んでんだよ』

『何ですかその偏った持論は』


無愛想な声でつっこみながら脱力した。金を稼ぎたいとか、出世したいとか、もっと他にもあるだろうに。

しかし佐原さんは、俺が必死に仕事に打ち込んでいるのは女のせいだと疑わない。……どうしてそんなに勘がいいんだ。


『坂本ほどの男が、女に振り回されてるとはねぇ。ま、すべてにおいて完璧な奴なんていないか』


最初は反論しようと思ったその言葉は、徐々に俺の心に浸透して、文句を言うより考えさせられていた。


俺は、ほぼ完璧だと言える奴を知っている。それは、一番近い存在である兄、遥一だ。

容姿も整った彼は、ためらいなく毒を吐く俺と違って常に人に優しくできるし、ひねくれたこともしない。人望も責任感もある、まさに優等生タイプだ。

それを鼻にかけることもなく、弟の俺からしても申し分ない男だと思う。

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