イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
『私、遥一さんのことを愛したい』


その瞳には迷いも遠慮もなく、驚いたことを覚えている。

兄貴への恋心が俺にバレた時は、ものすごく葛藤して申し訳なさそうにしていたのに、いつの間にか彼女は揺らがない意志を固めていたようだ。

もう少し俺への未練を持てよ、と言いたくなるくらいあっさりとしていて、悔しくなるどころか笑えてきたよ。コイツのこういう無邪気なところが好きだったんだよな、俺は。


幸せが崩れたあの時から約一年、その間に自分も桐絵への気持ちが変わっていることに気付いた。

どうか、本当に愛する人と幸せになってほしい──と。



彼女を手放すことを決意した俺は、遠慮なくふたりで会ってくれと、それぞれに伝えた。

あの時の兄貴の動揺っぷりは、カメラに収めておきたかったほどだ。


『な、何言ってんだ、零士! 俺は桐絵ちゃんのことは、何とも……』

『兄貴も好きだってことくらい、ずっとわかってたっつーの。見苦しい言い訳はやめろ』


ビシッと言い放つと、キョドりまくっていた彼は、頭を抱えて耳まで赤くしていた。我が兄ながら、こういうところは可愛いと思ってしまう。

『俺に悪いとか思ってんならその方が失礼だぞ』とさらに説き伏せ、遠慮していた彼の背中を押してやった。

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