イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
桐絵の声を遮り、『ふざけんな』と吐き捨てた俺は、鋭い瞳ではっとした様子の彼女を睨みつける。


『兄貴を選んだのはお前だろ。俺がどんな気持ちでお前らを見守ってたかわからねぇのか?』


怒りを抑えて、わずかに震える俺の声。自分の失言にすぐ気付いた桐絵は、『ごめんなさい……!』と深く頭を下げていた。

彼女はきっと、兄貴ではなく俺にしておけばよかっただなんて、本当に後悔していたわけではないと思う。

だが、その時の俺にとって、彼女の一言は許せるものではなかった。兄貴にも、俺に対しても失礼だろ。


俺は、ふたりならきっといい家庭を築いてくれると信じて退いたんだ。それなのにこんな状態だなんて、裏切られたような気がして仕方ない。

何が何でも仲直りしろよ。俺のためにも、幸せになってくれよ──。


そう願うと同時に、結婚とは本当に幸せになる手段なのだろうか、と相反した疑問を持つようになった。

相手のために、自分のやりたいことが制限されて不満に思ったり、一緒にいるのが苦しくなっていくだなんて、何のために結婚するのかわからない。

あんなにお互い愛し合って、うまくやっていた兄貴達ですら、今この状態なのだから。結婚なんてしない方がラクなのだ、きっと。

< 243 / 320 >

この作品をシェア

pagetop