イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
俺が結婚に対して消極的になっていったのはこの頃からだ。

良いアドバイスをするどころか、心配よりもイラつく感情の方が大きくて、ふたりの仲に口を出す気にもなれなかった。

結局桐絵とは険悪なまま別れてしまったし、兄貴ともしばらく会っていない。両親も不仲に薄々感づいているようで、さりげなく俺に聞いてくるが、“知らない”の一点張りにしている。


このまま悪い方向に向かっていくばかりだとしても、俺が出る幕じゃない。

そう思って、ふたりからは距離を置いていたのだ。

──俺の考えを変えるヤツが現れるまでは。


 * * *


緩いウェーブがかかったブラウンの長い髪、卵のようにきめ細かな肌、ぱっちり二重の瞳にふっくらとした唇。

愛嬌のある顔をした彼女は、明るい雰囲気も好感が持てる子で、話したことがない頃も存在だけは知っていた。

取引先のミスをカバーしてくれたという、同じ苗字の社員がなんとなく気になって購買部に出向いた時から、一葉を少し特別視していたことは否めない。

まぁ、それは“質の良さそうな社員”としてだったが。

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