イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
──ぴたり、とペンを動かす手を止めた。

俺のことを優しいなんて言う奴は、会社の中じゃ会ったことがない。しかも、俺達がまともな会話をしたのは今日が初めてだというのに、なぜそんなふうに思うのか。


「……どこが」

「こんな私に付き合ってくれたじゃないれすかぁ。話聞いてくれてー、今もそばにいてくれるれしょ」


素っ気ない俺に、一葉はとろけそうな笑みを浮かべてそう言った。

上司として部下をあのまま放っておくわけにいかなかっただけだが、それだけの理由かと言われると違う気もする。

何にせよ、これだけのことで俺を優しいと思うなんて、単純と言うか純粋と言うか。


「口は悪いけど、本当はあったかーい人なんれすね……」


目を閉じて、半分寝そうになりながら言う彼女を見やると、心の奥の柔らかい場所がくすぐられるような感覚がした。

恥ずかしげもなくそんなこと言いやがって……調子が狂う。


「……“口は悪い”は余計だ」


照れ隠しでボソッと呟くと、彼女はまたおかしそうに笑っていた。


一葉は知らないだろうな。

この時を境に、俺の気持ちが少しずつ変化していったことを。


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