イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
それから二ヶ月後、本庄のアプローチから逃れるために盛大な嘘をついたわけだが、夫婦ごっこをすることにした理由はそれだけじゃない。
まず、メシを作ってもらえるのがかなりありがたい。レストランに負けないくらい美味いし。
部屋の掃除をしてくれるのも助かる。一葉がマンションに出入りするようになってから、お掃除ロボはすでに埃が被っている。
そして……今思えば、俺は一葉に漠然とした期待を抱いていたのかもしれない。
彼女の恋愛偏差値を上げてやると言いながら、一葉に俺自身を変えてほしかったのではないだろうか。
本当は、兄夫婦の問題も、結婚に対する意識も、このままではいけないとわかっていたから。
彼女が初めて夕飯を作りに来てくれた時、その想いはさらに濃くなった。
純粋に結婚はいいものだと訴える、アイツの真剣できらきらした瞳を見ていると、その夢物語を信じてみたくなるんだよ。
そして思い知るんだ。
“本当に愛した人と、一生一緒にいたい”──そんなふうにもう一度思わせてほしいと、自分自身が願っていることを。
桐絵とは、ここ一年はほとんど会っていなかったし、連絡も取っていなかった。夫婦の問題は自分達でなんとかしろ、と突き放していたから。
だが、東京で一葉にふたりのことを打ち明けた時、少し気持ちが変わったのだ。