イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
今悩んだり、ぎくしゃくしたりするのも、絆を深めるために必要なこと。お互いを想い合っているなら、きっと解決策はある。

一葉の言葉は、俺にそんな希望を持たせてくれた。

それに、もしふたりが今の状況を乗り越えてくれれば、結婚に対するマイナスのイメージもなくなるかもしれない。払拭させたい、とも思った。


そうして徐々に思考が前向きになり、ふたりの仲を取り持つことにした俺は、再び桐絵ともコンタクトを取り、兄貴も交えて昔のように三人で食事をした。

あえて“仲良くしろ”とは言わず、楽しく過ごすことを目的として。


俺が間に入ることで、ふたりの表情や雰囲気が、次第に柔らかくなっていくのが見て取れる。

ふたりが俺のマンションに来た翌日、ハンカチを忘れた桐絵がわざわざ会社にまで取りに来た時も、『久しぶりに遥一とデートすることになった』と、嬉しそうに報告してきたし。

いい結果が見えてくるにつれて、俺も心の底から安堵し、ふたりの幸せをまた願うことができている。


丸くなってきた俺の心は、懐かしい感覚も呼び起こした。

それは一葉といるとわかるんだ。身体の奥から、温かくて優しいモノが溢れてくる、この感じ。

展示会が終わった直後に泣いた顔を見た時や、東京に行った時。一葉と過ごすいつもの何気ないシーンで、その感覚に陥る。

この感覚が、“愛”でないなら何だと言うのだろう──。




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